2021年3月
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G戦場ヘブンズドア |
/ 作:日本橋ヨヲコ / 発表年:2001 / |
/ 掲載雑誌: 週刊ビッグコミックスピリッツ増刊「IKKI」
→月刊「IKKI」/ |
/ 掲載時期:2000年第1号〜 2003年第8号/ 巻数:全3巻 / |
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【本作品とモグラの出会い】
モグラも雑誌としてはチェック不足だった「IKKI」に連載されていた漫画。当会の薬部氏より紹介され単行本に目を通し驚愕しました。プロット、ストーリー、世界観いずれを取っても完成度が高く、もはや漫画というより”小説”を読んでいる感覚を味わいました。
【作者紹介】
作者である日本橋ヨヲコ氏は1996年に「爆弾とワタシ」で
第34回ちばてつや賞佳作を受賞し、「ノイズ・キャンセラー」でデビューしました。他にも「プラスチック解体高校」(講談社・全2巻)、「極東学園天国」(講談社・全4巻)などの作品を描いています。独特の世界を作り上げ、その中での人間模様を細かな心理描写と共に描く手法を用い、本作品はそういった作者の良さが凝集された作品となっています。 |
漫画の名作には2種類ある。1つ目は、再読性に優れ何度でも楽しめる作品であり、2つ目は、再読性は低いが一読目のインパクトが強烈な作品である。このG戦場ヘヴンズドアは2つ目に分類される名作だとモグラは思う。なぜなら本作品を初めて読んだ時、モグラは漫画を読んでいるというよりは、めくるめく幻想的な世界観に浸かっていける・・・名作と呼ばれる”本”を読んだ時に味わう独特の感覚を味わうことができたからだ。
狂気を含む独自の世界の中に読者を引き込んでいく設定やストーリー展開のテンポ、細やかな心理描写は見事の一言であり、きれいと言える絵ではないが、逆にこの絵だからこそ、この臨場感を得れるのだと思わせてくれるほど絵が世界観に見事にマッチしている。
本作品が連載されている雑誌「IKKI」は、もともと「週刊ビッグコミックスピリッツ」の増刊として始まったもので、スピリッツ編集部を中心に、ビッグコミック、ビッグコミックオリジナル、ビッグコミックスペリオールの各編集部の有志の参加によって、ビッグコミック系統の他雑誌には連載困難な作品を集めて作られた増刊である。
そしてこの増刊のオリジナリティあふれる質の高さは、一部の読者層に受け入れられ、遂に2003年4月号より1雑誌として独立したという経緯を持っている。本作品はそのような雑誌の立ち上げ期から独立期に描かれた作品であり、だからこそ雑誌の性格に左右されず作者の独自の世界観を存分に描けたのだろう。
ところで、誰しも自分の職業にまつわるストーリーはイマイチ楽しめなかった、という経験があるのではないだろうか。例えば弁護士は弁護士ドラマを、医者は医者ドラマを他の人と同じようには楽しめないと良く耳にする。それは、どうしてもストーリーの状況に自分の体験を重ねてしまうからで、多少嘘臭いことでもそのまま信じてその世界観に没入する、というストーリーを楽しむための基本姿勢を思うようにとれないことが、その一因となっている。
だから、漫画家にとっても”漫画家”を描く作品はそのようなタブーに当たるのではないだろうか?実際、漫画家を主人公に扱う漫画は数少なく、その中でもある程度の知名度のある作品となると島本和彦氏による「燃えよペン!」「吼えよペン!」くらいではないかと思われる。そういう意味では、本作品はタブーに挑戦している作品だということもできよう。
新雑誌としての挑戦、プロットとしての挑戦、そして狂気的世界を描くその挑戦・・・
こういった数々の挑戦をするためにはものすごい精神力を要する。なぜならこのような挑戦をしている作品を描く時は心のバランスを保つ事が非常に難しいからだ。少しでも心が狂気の方に取り込まれると独りよがりな作品となってしまうし、逆に正気に戻りすぎると中途半端で、読んでいる方が気恥ずかしい作品となってしまう。
この微妙な心のバランスを保ったまま見事に終着点まで描き切ることができたのは、作者の作品を作り上げる、という強靱な意志・精神と、それを支える理解力ある編集の力があったからだと想像される。この現実世界に対する想像が作品内で描かれている虚構世界と錯綜して、描かれた狂気を含んだ世界が、よりリアルに感じられるものになっている。新しい漫画世界を作り上げるための挑戦力により、奇跡的なバランス感覚のもと生まれた奇跡の名作と言えるだろう。
本作品は、漫画を愛する人間なら一度は読むべき作品である。「最近の漫画は昔に比べて・・・」という言葉をよく聞くが、そのような人にこそ本作品を手にして欲しい。ここ最近で衝撃を受けた数少ない作品としてモグラは胸を張ってこの作品を推薦したい。
文中の漫画データ一覧
タイトル |
作者 |
連載雑誌 |
巻数 |
出版社 |
プラスチック
解体高校 |
日本橋ヨヲコ |
ヤングマガジン |
全2巻 |
講談社 |
極東学園天国 |
日本橋ヨヲコ |
ヤングマガジン |
全4巻 |
講談社 |
燃えよペン |
島本和彦 |
シンバット
ヤングクラブ |
全1巻 |
竹書房 |
吼えよペン |
島本和彦 |
サンデー
ジェネックス |
H16年
連載中 |
小学館 |
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注)上記の文章は赤字の部分にカーソルを合わせると簡単な解説が表示されます。
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