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キャットルーキー / 作:丹羽啓介 / 発表年:1994 /
/ 掲載雑誌:増刊少年サンデー(スーパー) /
/ 掲載時期:1994年〜 2003年3月号/ 巻数:全26巻 /
【本作品とモグラの出会い】
 増刊少年サンデー(スーパー)を手に取ると、いつも定位置にあり印象的な作品でした。読み切りや短い巻数の漫画で構成されている本雑誌において10年近くも連載が続いた唯一の作品です。増刊少年サンデー(スーパー)の””と言えるでしょう。連載終了後に無性に読み返したくなったため、購入しました。
【作者紹介】
 1992年にヒロナカヤスシ先生を原作に「格闘王物語ビュンBOY」を描いたのがサンデーに登場した初めでした。その後、1994年に本作品の連載を開始した後は2003年に至るまで本作のみを描き続けました。丁寧な絵、テンポのいい展開、どれを取っても一級品なのですが、週刊誌に姿を現さないのはみず谷なおき先生を思わせます。2004年以降の丹波啓介先生の活動に目が離せません。
 この作品が連載を開始した’94年当時、少年サンデーではあだち充先生の"H2”や満田拓也先生の”MAJOR”が連載されていた。そのため、これ以上野球漫画に紙面を割けないという判断のもと、この作品は増刊少年サンデー(別名サンデースーパー)で連載を開始することになったと思われるが、それは非常に不遇であったと言わざるを得ない。というのも、本来なら少年サンデーで人気連載漫画となっていてもおかしくないほど、この作品は名作だからである。
 
 しかし、だからと言って少年サンデーの編集部を責めるわけにはいかないだろう。というのも、連載当初の第1章が描かれている時点では、これほど息の長い名作になるとは誰一人予想できなかったに違いないからだ。なぜなら、この作品が本領を発揮し始めるのは、第1章とは様相をがらりと変えた第2章からだからである。それは”ジョジョと奇妙な冒険”が第1章、第2章、第3章と章が進むにつれてどんどん盛り上がり、時代を作っていった様に似ていると言えばその雰囲気は分かっていただけるだろうか。
 
 本作品をモグラがこれほど高く評価する第1の理由は、この作品が水島ワールドに匹敵する丹波ワールドを築き上げることに成功したと思うからだ。この作品では、プロ野球界のパ・リーグを舞台に擬似的な球団を1チーム作り上げ、実際のプロ野球選手のパロディ選手などと共にペナントレースが描き上げられている。
 
 その際、主人公だけでなく脇役達のキャラクター設定をも密にするなど、独自のキャラクターの肉付けがしっかりと行われているため、あたかも野球ファンがプロ野球を応援するかのように、読者が各選手を応援することができる。このことにより、野球ファンが多いことが想定される読者層が、この作品に親密感のあるリアリティを感じることができ、そのリアリティが丹波ワールドを築き上げているのだ。
 
 又、「1章=作品内の時間で1年」というルールを設けることにより、次章に入った時には前章の主人公やライバルを脇役に回し、新たにルーキーとして登場してきた選手を主人公として描く、という手法も丹波ワールドならではである。水島氏は、自分の他の作品に登場した選手を再登場させることにより、水島ワールドというリアリティのある世界を構築することに成功したが、丹波氏は章分けという手法を用いる事により、1つの作品内で丹波ワールドというリアリティあるオリジナルな世界を構築したと言えるだろう。
 
 今まで登場したキャラクターを理解した上で、新たに登場したキャラクターを覚えるということは、通常読者に負担を掛けるのだが、この章分けという手法は見事にその負担を軽減し、擬似世界の体験を容易にする上で一役買っている。このようにして描かれたこの作品は、数多く描かれている野球漫画の中でも水島ワールドに匹敵する大規模な擬似的野球界を描いた作品としては唯一のものとなっていて、それだけでも高く評価できるのではないだろうか?(ここでは主人公のみをキャラクター設定し、周囲のキャラクター設定がおざなりな通常のプロ野球漫画を擬似的野球界を描いた漫画と呼ばないこととした。)
 
 また、モグラがこの作品を高く評価する第2の理由として、野球の駆け引きがリアリズムに基づいて描かれているということが挙げられる。確かに、この作品には’魔球’と呼ばれる球種――野球漫画においてはリアリズムを失うものの代名詞とも言うべきもの――が登場する。しかし、この作品に登場する’魔球’とは決して非物理的なものではなく、作品内での魔球の破られ方――野球漫画において魔球は破られなければならない――は、実際の野球界においてジャイロボールが出現し、対応されていく様子さながらに描かれている。つまり、魔球が登場するにも関らず、この作品はリアリズムの余地をきっちりと残しており、野球らしい駆け引きなどがきっちり描ききられているのである。
 
 また、10年にも渡る連載を成功させた結果、ペナントレースの盛り上げ方やストーリー展開もベテランの味が出ていて、まさに雑誌の”顔”にふさわしい名作であったと言えるだろう。もし連載開始時期に恵まれ少年サンデー本誌に連載されていれば、今頃大ヒット作品になったと思われるほどの名作なのでこのまま大勢の人の目に触れずに終わらせてしまうには余りにも惜しい。野球漫画が好きな読者は、ぜひ一度この作品に目を通して欲しい。
文中の漫画データ一覧
タイトル 作者 連載雑誌 巻数 出版社
格闘王物語
ビュンBOY
ヒロナカヤスシ
丹羽啓介
少年サンデー 全3巻 小学館
H2 あだち充 少年サンデー 全34巻 小学館
MAJOR 満田拓也 少年サンデー H16年
連載中
小学館
ジョジョと
奇妙な冒険
荒木飛呂彦 少年ジャンプ 全63巻 集英社

注)上記の文章は赤字の部分にカーソルを合わせると簡単な解説が表示されます。