1997年ドイツボードゲーム大賞を獲得したレースゲームで面白さは保証付きなはずだが、いまいち日本国内では話題になっていない感が強いのが、この「ミシシッピクイーン」。 ゲームの世界観は、蛇行するミシシッピ河を外輪船でいち早く下り抜け、勝利の栄誉と貴婦人からの祝福を受けようというもので、ゲーム内容もレースとはいっても、激しい競争ではなく、優雅な競い合いといった風情を楽しむものになっている。 システム的には、レースをする外輪船の動かし方では、遊び手の思いのままに動かせるという自由を与える一方で、他の要素の部分では、先行すればするほど貴婦人の祝福を受けやすいというメリットと効率の良いコース取りは難しくなるというデメリットを同時に用意するという不自由さを与えており、遊び手にレース全体の展開の組み立てを悩ませるという仕組みになっている。 外輪船の動かし方の自由度により、他の外輪船の動きを完全に考えることが可能なことが、このゲームが人を選ぶところだろう。自分がこう動いた場合は、相手はきっとこう動くはずだから…と考え、先の先まで視野に入れて長考する楽しみは、あまり多くの人に受け入れられるものではないからだ。しかしゲームの性質上展開を読まなければ勝ち目が無い立場に追い込まれることがあるのも事実で、この辺りのさじ加減の難しさが日本国内ではあまり話題になっていない理由の1つだと思う。 運の要素があるためより深く考えた方が勝てるとは限らないけれど、しかし考えなければ(他の人が考えてくる以上)勝ち目が無くなる可能性は高い――というゲームシステムは、なかなか一般受けしない。しかし一方で、考えることが楽しみとなる思考系のメンバーで遊べば、先の展開を全員であれこれ話し合いながら、自分なりの決断を下す楽しみを存分に味わえるのも確か。 そんなに考えていたら、プレイ時間がとても長くなるのでは?いえいえ、思考系のメンバーは他人の手番でもしっかり考えているので、それほどプレイ時間は長くならないのですよ。優雅に繰り広げられているように見える「レース」が戦略的な駆け引きに満ち溢れているというのは、実際の操船レースの世界観を良く反映して実は世界観も見事なゲームだと思う。もちろん軽く楽しむこともできるゲームだが、その楽しみなら他のゲームの方がより味わえるのも確か。ぜひじっくりと優雅な時間を味わって欲しい。